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【展覧会レビュー】上村松園「焔」

初めてこの絵のことを知ったのは、美術館めぐりの番組でした。
番組では東京国立近代美術館で開催されていた「あやしい絵」展を紹介。
国内にあるいかにも怪しげな作品を多く展示した展覧会でした。

そこでひときわ注目を浴びる”あやしい”だったのがこの作品。

モチーフになったのは「源氏物語」に登場する「六条御息所の生霊」。
源氏を愛したがために嫉妬に狂って生霊となり、源氏の恋人たちを悩ませる女性です。

 

「焔」の六条御息所の表情は恨めしさが湛えられて、なんともおぞましい。
美人画作家である上村松園が描く生霊は、繊細で美しいけど、あまり長くは見つめたくないと思わせます。
あまり見つめてしまったり彼女に同情してしまうと、着物に張り巡らされた蜘蛛の糸に絡め取られてしまうかもしれません。

 

トーハクに行ったこの日、この絵が展示されていたのは、普段は国宝に指定された作品がただひとつだけ展示される特別な部屋。
今は「未来の国宝」をテーマにした企画展示がされています。

創立150年を迎えたトーハクが、さらに150年経った時に国宝になっていたら、と考えた作品が展示されます。
前月は「見返り美人図」だったようです。

 

美しい。されどおぞましい。
まじまじと見つめていたくない。

そんな風に考えてしまうこの作品は、蠱惑的と言えるのでないでしょうか。
やはり国宝にするべき。