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【展覧会レビュー】「奇想の絵師 歌川国芳」

いつも都内の美術館や博物館ばかりに行ってますが、今回はちょっと違う方向に。
さいたま市うらわ美術館で開催されている『政令指定都市移行・区制施行20周年 奇想の絵師 歌川国芳』に行ってきました。

 

書いてあること

 

【展覧会レビュー】

浮世絵はそんな真面目に見た事はなくて、浮世絵だけの展覧会は初めてかもしれないです。
名前だけは聞いたことがあった歌川国芳でしたが、美術館を出る頃には大好きな絵師になってました。
もっと国芳のことも浮世絵のことも知りたいと思えました。

 

第1章の「武者絵のはじまり・豪傑・合戦の図」では現代でよく見るような筋肉とは違う書き方の武者絵に圧倒されました。
迫力満点。
役者絵とはまた違う勇ましい男たちの絵に見入ってしまいました。

私みたいな浮世絵初心者はどうしても富嶽三十六景とか美人画とかを思い浮かべてしまいますが、こんなに迫力のある勇ましい浮世絵があるのかと感心しきりです。
ああ、なんというイケメンだらけなのだろうか……。

 

第2章の「ヒーローの妖怪退治・怨霊・幽霊」では<源頼光公舘土蜘作妖怪図>があって、テレビで見たことのある有名人を見た時のように心躍りました。
頼光四天王と土蜘蛛といえば、太刀・膝丸の逸話を想起させます。
さらにこの絵には天保の改革への批判も込められてる、なんていう謂れもあって、古典と風刺のミックスだー!と、一枚の絵を前にしてウキウキです。
ニヤニヤしてるのが隠せるのでマスクがあって助かりました。

こうした風刺も国芳は描いていて、役者絵を禁じられた時には猫を役者に見立てて描いていたりと、時の政治への思うところを絵にしていた人なんだな、と思いました。
反骨精神というのでしょうか、そういうお人だったのかな、と。

 

武者絵ばかりかと思ったけど、美人画もしっかり描いていました。
<当盛風俗好>の鮮やかな青は印象的です。
三人の女性がそれぞれ違った青の着物を着ているのですが、これがまたなんともオシャレな柄。
国芳の描く着物は男も女もオシャレだなと思って見ていたのですが、実家は染物屋ということを知って、納得でした。
今度どこかで国芳の着物の柄にスポットを当てた展覧会や本が出たりしないかしら。

 

こちらの展覧会では国芳の作品を約160点、7つのテーマに分けて展示しています。
こんなにテーマを分けられるものなのかと驚きますが、本当に多彩な絵を描いています。
武者絵や妖怪絵のみならず、動物擬人化やパロディにちょっとクスッとくるようなユーモアのある作品と、バラエティに富んでいます。
これ本当に1人の絵師の作品なのか、と疑うほどです。
だから160点もあって見飽きない。
国芳と知らずにどこかで見た作品もちらりほらり。
終始、感心仕切りの展覧会でした。

 

【この日のランチ】

展覧会が終わったら同じ建物の「ロイヤルパインズホテル浦和」でランチです。
頭使ったら糖分摂取が必要。
この日はペストリーショップ「ラ・モーラ」のオープンサンドセット(1,500円)。
パンが好きなのでとにかくパンが食べたかった。
けど一番美味しかったのはお肉でした。



【展覧会レビュー】NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」

前回のブログで永青文庫に行ったことを書きましたが、それと同じ日に日本橋三井記念美術館まで足を伸ばして大河ドラマ特別展に行ってきました。

 

meg-kinjo.hateblo.jp

 

「どうする家康」自体も好きだし、刀剣乱舞ともコラボしているし。
しかも静岡の久能山から「ソハヤノツルキ ウツスナリ」も来ているし、行かないという選択肢はないんです。

パネルも置いてあったんですけど、こちらは美術館内ではなく日本橋三井タワーのエントランスに置いてあるので、美術館行かない人でも写真は撮影できます。
千疋屋にフルーツパフェを食べに行くだけの人も、マンダリンオリエンタルホテルに用があるだけの人でも、オフィスで毎日働いてる人でも、なんならちょっと寄り道しにきた人でも自由に撮影はできます。

大河ドラマ特別展ということで、家康に関する美術品や史料の展示がメインです。
久能山所蔵のものがとても多かったです。
静岡まで行かなくても見れるの、とてもありがたい。

「国宝の刀剣」と銘打った一部屋には、三井記念美術館所蔵の国宝刀剣が一口だけ展示されていました。
一口の刀剣(前期後期とも短刀)だけを展示するという、贅沢な部屋の使い方です。
トーハク本館2階にある「国宝室」にも通ずる贅沢さです。
部屋の大きさはもうちょっとコンパクトですけどね。

私が行った前期に展示されていたのは『短刀 無銘 正宗(名物 日向正宗)』。
関ヶ原の戦い石田三成から水野日向守勝成が分捕ったと言われている短刀です。
水野勝成は家康の従兄弟にあたり、「どうする家康」的に言ったら、勝成の父は松嶋菜々子寺島進の兄弟にあたります。
勝成本人は「鬼日向」とあだ名される勇猛さで、「どうする家康」の水野家の面々を見るとなんだか納得してしまいます。
今後出てくるかな、水野勝成

 

圧巻だったのは『大日本五道中図屏風(江戸~京都)』。
8曲2双というビッグサイズの屏風絵で家康の一生を辿ったものです。
ちなみにこちら、あくまで江戸から京都を描いたもので、あと大阪から長崎を描いた6曲1双の屏風もあるそうです。
全長26メートル、展示されているものだけで10メートル以上です。
屏風に描かれたお城や周辺がとにかく細かくて、まだ前半だというのにお腹いっぱいになりました。
洛中洛外図屏風』みたいに、屏風絵って情報量多いものをよく見ますが、こちらもそんな感じです。
この展覧会では他にも『長篠合戦図屏風』『関ヶ原合戦図屏風』などの屏風絵があって、頭がパンクしそうになります。
屏風絵を見るなら元気な時に行った方が良いです。

 

頭の休憩時間にもなるような展示もありました。
家康が描いたと言われる鳥の絵『水艸立鷺図』は、ゆるかわな絵です。
徳川家光の絵を見たことある人は分かってくれると思うんですけど、あのゆるふわに通ずるものがありました。
「伝徳川家康」って説明書きにあったけど、たぶん本人が描いたよこれって確信めいたものを抱きました。

その他、教科書で見たやつ!ってなる作品の現物がいくつも。
徳川家康十六神将図』などは歴史番組でも最近よく見かけます。
その最たるものが『金陀美具足』でしょうか。
この展覧会のメインとも言える展示物です。
小さな傷がいくつもあって使用感を感じました。
このリアルさは現物を見たからこそ感じるものだと思います。
ドラマで松潤がまとっていたけど、実際に家康がこれまとっていたんだなぁと感慨深いものがあります。

そしてその隣に『太刀 無銘 光世 切付銘 妙純伝持 ソハヤノツルキウツスナリ』が展示されていました。
初めて見ましたが、第一印象は「真っ黒」でした。
刀身は太くてどっしりとした印象。
家康が実際に佩用し、遺言で「そのきっ先を西(豊臣方)に向けて置くように」とされたと言われています。
徳川の守り刀っていうか、東側の守り刀じゃないですか。
三井記念美術館の展示品紹介ページにでは「家康の御神体として神社の内陣に祀られた太刀」と紹介されてます。
なんか、思ってた以上にすごい刀だったのね、あなた。

想定していた以上に充実の展覧会でしたが、大河ドラマ特別展ということもあって、キャストのスタンディも展示されてました。

私がオタクだからでしょうか、スタンディ見るとなんか落ち着く。
三英傑揃い踏みだし、ドラマのインパクト強すぎて信長見るとなんか笑っちゃうし(失礼)。
こういうの見ると、この展覧会確かに大河ドラマ特別展なんだなと実感。
とにかく濃密な展覧会だったんです。
この規模の展覧会は大河ドラマ関係なくやるべきと思いました。

 

【展覧会レビュー】「揃い踏み 細川の名刀たち ―永青文庫の国宝登場―」

永青文庫、行きたいな行きたいなと思っている間にタイミングを失ってしまっていたのですが、ようやく行くことができました。
なんでそんなに行きたがっていたかっていうと、刀剣乱舞の我が初期刀「歌仙兼定」の所蔵先だからです。
「歌仙兼定」自体は京博で開催された「京のかたな」で見たことがあったのですが、やはり所蔵先で見るということはとても意義があると思うのです。
刀剣乱舞審神者の間では「ご実家」と言ったります。
それくらい所蔵先は重要ということです。

今回の展覧会はタイトル通り、刀剣がメインです。
「約8年ぶりに国宝の刀、全4口勢揃い」と銘打って、刀剣と刀装具を中心に全63作品が展示されました。
国宝刀剣4口を細川護立氏個人が購入したっていうのも、なかなかにスゴい。
財力だけじゃなく、確かな審美眼が養われていたという証だと思います。

 

第1章は刀剣の部屋。
「生駒光忠」や「古今伝授の太刀」など4口を始めとした11口の刀剣が勢揃いしていました。
現在の永青文庫の稼ぎ頭「歌仙兼定」(出典:「ぶらぶら美術・博物館」#430で橋本前副館長曰く)は独立ケースに入れられてドーンとした佇まいをしていました。
いつ見ても恰幅のいいお姿です。
この貫禄、さすが。

そして初めましての「古今伝授の太刀」。
割と衝撃でした。
とてもスラッとしたスタイルで美しい。
備前刀みたいな派手な刃文ではなく、ただただ均整の取れた姿で見惚れてしまったのです。
私はそんなに刃文とか語られるほど詳しいわけではないけど、刀身の幅のど真ん中に鎬があって、それが本当にバランスが良い。
「刀の鑑賞はまず姿から」とは言いますが、説明文とか茎とか見るその前に全体を見るのって大事なんだなと思えた一口です。

その他の刀剣については華やかな刃文を持つ刀剣もあれば、「歌仙兼定」のような直刃もあり、「庖丁正宗」のようなずんぐりとした短刀も展示されていました。
偏りがないな、という印象を持ちました。

 

第2章からは刀装具がメインです。
肥後の国(現在の熊本)のお殿様の家系ですので、肥後金工の鍔がたっぷり展示されていました。
刀剣のこと勉強していったら刀装具も大好きになったので、一気に刀装具を見れるのはとても嬉しかったです。

肥後金工は質実剛健の中に雅さもある、といった印象。
鉄鍔なだけでなく透かし彫りや象嵌も施されていて、かといって華美ではない。
鍔って直径10cmもないのですが、その小さな枠の中で「桜九曜紋透鐔」のような細かな桜をいくつも彫っていたりして、技術力の高さがうかがえました。
擬人化したら渋いイケオジになりそう。

刀装具と言ったら、の後藤家の作品も当然のようにありました。
細川護立氏、渋いのも金ピカ華やかなのも収集していたんですね。
刀剣乱舞的には後藤程乗作の「頼政鵺退治図三所物」がやはり目を引くところ。
獅子王」のじっちゃん、源頼政が鵺を退治した時の様子と、帝から太刀「獅子王」を下賜されている場面が現されています。
三所物はこういう物語性のあるところが良いですね。
小さな屏風絵みたい。

 

今回の展示、これだけの作品があるのに借りてきたものは一切なし。
全て永青文庫所蔵です。
ひとつのテーマでこれだけの展覧会が開ける細川家、いやはや恐るべし。