日々是ぶつぶつ

思いついたことを適当に

『竹取物語 ビギナーズ・クラシックス』を読了しました

竹取物語は有名。
というか、記憶にあるそれは『かぐや姫』ではなかっただろうかと思い、原文と訳文を読めるこちらを読んでみました。

角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスは、古典初心者に向けた内容で、本によっては全文収録されてません。
けど『竹取物語』に関しては全文です。
短いしね。

【訳文 → 原文 → 寸評 → たまにコラム】といった順番で収録されています。
まずは現代文で読んで、同じ文章を原文で読み、解説とコラムで理解を深めるようになっています。

 

内容は概ね昔話の『かぐや姫』と同じ。当たり前だけど。
ただ、竹取の翁にはちゃんと名前はあるし、かぐや姫の無理難題に失敗した男たちの末路も書かれているし、一番驚いたのは、かぐや姫が帝のことを好きだったということ。

月から地球へ堕ちたのは、かぐや姫に何かしらの罪があったからというのも知らなかった。

男たちに無理難題を吹っかけていた頃というのは、かぐや姫はトガッていた。
「まあ、どうせワタシ月に帰るから、人間の男に興味ないし」みたいな。
しかしおじいさんとおばあさんに大切に育てられ、帝と文のやり取りを3年続けていくうちに、人間としての愛に気が付き月に戻ることを拒むようになっていった。
しかし願い叶わず月に戻ることになり、天の羽衣を身に着けて地上での記憶をなくしてしまうのでした。
だれも幸せではないという終わり方。
みんなが泣いて、おじいさんとおばあさんに至っては、病に臥せってしまったという。

 

竹取物語』は元祖SFであるという見方ができるけど、この本の最後では民俗学の視点からも解説しています。
古事記日本書紀記紀)で日本の創世について触れられているけど、この時点でファンタジー色がかなり強い。
各地方に伝わる民話もかなりファンタジー
桃太郎に瓜子姫、一寸法師に浦島太郎。
けどこれらのおとぎ話は土着の民話とかなり密接です。
さらに元を正せばだいたい記紀につながっていくとか。

竹取物語』の成立は平安時代頃ということで、実は藤原家への皮肉がこめられているとか、様々な解釈があるんですが、どのみち平安時代頃の人の中では普段から身近に触れてきたファンタジー色の強い民話と同じレベルで親しみやすかったのではなかろうか、と思いました。
SFというカテゴリーがない当時では、月から来たとか月に戻るとかあまりにも突飛な発想だっただろうけど、隋や唐から来た人がまた戻ることに喩えていたかもしれない。

改めて『竹取物語』に触れてみると興味深いことばかりでした。
それにしても日本人、アンハッピーエンドを好む体質は昔からだったんだなぁ。